EeePC1000HEの改造
-miniPCI-Expressスロット増設-

EeePC 1000HEに動画再生支援カードであるBroadcom BCM70015を搭載するべく
改造を行います。

BCM70015とは、Broadcom社が作成した動画再生支援カード(というより、もはやデコーダカード)です。
Atomなどの非力なCPUでは再生が極めて困難なフルHD動画などのデコードをこのカードが
肩代わりすることで快適に再生できるようにすることを目的としています。
つまりこれを乗せればEeePCでも快適な動画視聴が出来るようになるわけです。

標準のEeePCには無線LAN用にminiPCI-Expressスロットが1つだけ搭載されています。
ここに刺さっている無線LANカードを抜いてBCM70015を挿しても動作はしますが
無線LAN機能は使えなくなってしまいます。
しかし内臓無線LANを無効にせず、もうひとつminiPCI-Expressスロットを作れる場所が実はある
ので、今回はそこを有効化して使うことで無線LANと動画再生の両立を図ります。
※EeePC90x系については既に改造方法が確立しているようでしたが2010年8月現在で
1000HEについての明確な改造方法が公開されていないようでしたので方法を共有します。

今回増設するminiPCI-Expressスロットに搭載するBCM70015は
PCI-Expressの信号を使用するので、PCI-Expressで使用する信号線の種類を確認します。
(miniPCI-ExpressスロットにはPCI-Express及びUSBの信号が来ており、
差し込むカードによって使用する信号の種類が異なります)

まず、今回の改造で接続するべき信号線を説明します
図はホストとカード側でのやり取りに最低限必要な信号を示したものです。

下は各信号の簡易説明です。
WAKE#:デバイスの起動を確認する信号
REFCLK+/-:PCI-Expressで使用するクロック。差動信号である
PERST#:カードのリセットに使用される
PETp0/n0:PCI-Expressの送信用信号線。差動信号である。
PERp0/n0:PCI-Expressの受信用信号線。差動信号である。
SMBus_CLK:起動状態管理などを行うバスのクロック
SMBus_DATA:起動状態管理などを行うバスの信号線

以上の信号線+電源線が接続されていれば接続されたデバイスは一応動作します。
(CLKREQ#が上記にはありませんが無くても動くようです)
miniPCI-Expressの詳細なピンアサイン、その他物理的、電気的仕様が知りたい場合は以下のPDFを
参照してください。(資料内の文章は英語です)
PCI-Express資料
(PCI-SIG デベロッパカンファレンスの資料です。
全ての権利はPCI-SIGにあります。掲載に問題がある場合は削除します。)

ではEeePC1000HEの改造にはいります。
まず全ての螺子を外してマザーボードを取り出します。分解方法は他サイト様でも十分に公開
されているため割愛します。
マザーボード裏側(HDDなどが付く面)を見ると、部品が付いていないパターンで
”3G CARD”と書いてある部分があります。
その部分は本来ドコモやイーモバイルなどのデータ通信カードを挿せるように
miniPCI-Expressスロットが付けられる場所になっています。
今回はこの部分にminiPCI-Expressスロットを取り付けます。

用意するもの
miniPCI-Expressスロット:aitendoなどで販売されています。
コンデンサ:PCI-Expressの信号線で使うカップリングコンデンサです。80〜150nF位が適当
半田ゴテ:コテ先は0.5mm位になっている極細タイプがお勧め。上級者なら1mm以上でも大丈夫なはず
半田線:Rohs指令対応半田(無鉛半田)を買いましょう。
ピンセット:0.5x1mm程度の超小型チップコンデンサなど細かい部品を挟める程度の良品を推奨


まずマザーボード裏側の部品取り付け位置を確認します。
下の画像に取り付けポイントを示します。

※ブリッジポイントは半田を盛ってその名のとおりブリッジしてる状態にしてください



次に表側(CPU,チップセットなどがある面)の半田付けポイントを確認します。
下の画像に半田付けポイントを示します。
今回追加で付ける予定のBCM70015ではUSBラインは使用しませんが、改造ついでに
USBラインの有効化も行うことにしました。



上記半田付けポイントのみではPCI-ExpressのPERp0/n0が有効化されていない状態ですので
PERp0/n0についても半田付けを行います。
下の画像に半田付けポイントを示します。


以上の半田付け作業を行うことでPCI-Expressラインの有効化が完了します。

※もしものときの回復手順:
もしブリッジする箇所のパターンが半田の熱などで剥がれてしまった場合、
最寄のテスト用の測定ポイントを探します。
下の画像だと赤で囲んだポイントになります。

見つかったらその部分に細い線を半田付けしてなるべく元のパターンと同じ場所を
なぞる様に配線し、目的の場所へ繋ぎ直します。(できる人は残った基板上配線部分のレジストを
剥がして出てきた導体部分に線をつなぎ直しても問題ありません)
この時、半田付けしたポイントよりも先(使えなくなってしまったパタンがあるまでの基板上の
配線)について、パターンカットを行って無効化しておくことが大切です。
(これを行わないとPCI-Expressの信号線などでは信号の反射が起きてしまい、正常な通信が
できない原因になります。)


後は3GCARDの空きパターンにminiPCI-Expressソケットを取り付けます。
下の画像はソケットを取り付けた後の画像です。
PCI-ExpressのPETp0/n0の部分の半田付け中にパターンが取れてしまったので
修復してあります。



取り付けが完了したらBCM70015を挿入します。
下画像は挿入後の画像です。
電源部分の負荷の増加とノイズが気になったので適当にデカップリングコンデンサ用の
空きパターン部分などにOSコンを適量挿入しました。



基板裏側全体としては以下のようになりました。


ここまできたら後は元通りにEeePCを組み立て直します。(組み立て方法は割愛します)
電源を投入したら正しくWindowsが立ち上がり、新しいデバイスのインストール画面
(BCM70015のドライバを要求してくる)が立ち上がればまずは半田付け部分の改造は成功です。
ドライバをインストールした後、以下のようにデバイスマネージャからBCM70015が
認識されれば使用可能となり、改造の全工程が終了となります。


後話:
BCM70015に対応したプレーヤーでMP4のフルHDに近い動画を再生しても
CPU使用率30%前後で目立ったコマ落ちなく再生できました。
これでEeePCのような非力なCPUしか積んでいない環境でも快適に
リッチな動画コンテンツを視聴できるようになりました。


今回はこれで改造方法レポート終了です。

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